朝、数日来の曇天を抜けてやっと見えた塵ひとつない晴れ空だった。二車線道路沿いの歩道では、蛍光色のメッシュタンクを揃って着用した高齢者の小集団が、アミーバのように広がったり縮まったりしながらどこかへ進んでゆく。おのおのが右手にトング左手に自治体指定のゴミ袋を携え、広い歩道の方方に散った凹んだコーヒー缶やら、ちぎれて短くなった吸い殻やら、得体の知れない襤褸やらを拾い集めては、ゆるやかに蛍光色の輪へ戻ってゆく。広がったり縮まったりの繰り返しによって、街は少しずつではあるけれども目には見えない速さ(遅さ)でたしかに浄化されている。会釈とは受け取れないこともない程度に頭部をなんとなくふわつかせながら、メッシュタンクの集団をそっと追い抜くと、片田舎の高い空のさらにまた高いところで、今しがた飛行機雲が描かれ始めた。