やりなおし

いやに涼しいゴールデンウィークに植えつけた赤ピーマンの苗は、翌日の大風に吹かれて幾度も支柱に打ちつけられ、小さな葉のほとんどが根元から折れてなんとも貧相な姿に変わり果ててしまった。春を過ぎても強風に見舞われるこの地域の特性を知りながら、ほんの少しの手間を惜しんで防風ネットをかけないのが悪かった。前日のホームセンターでは傷ひとつなく堂々と陳列されていたはずの苗が、わが庭では前後左右へ頼りなさげに揺られて見ていられない。あのとき防風ネットをかけていればと、水やりの度にこちらも一緒になって項垂れたくなる。その後も根気よく水をやってはいるものの、大事な時期に葉を失った苗が今更見違えるように元気になるわけがない。だが、元気のない赤ピーマンは、あの元気のない赤ピーマンのままで、六月を目前にして真白な花をひとつ咲かせたのだった。また風が吹けばたやすく折れてしまいそうに見えるけれど、それでも咲いた。植物は如何して、そんなところからせめて咲くまでやり直せるのだろう。

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